弁護士法人宇都宮東法律事務所

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コラム

債権法改正~①賃貸借契約について~


2020年05月18日コラム

前回のコラムでは債権法改正の経緯等をお話ししました。

今回は特に、弊所宛てに不動産会社様からお問合せの多かった賃貸借契約の改正についての概要をお話ししていきます。

賃貸借契約の改正ですが、基本的には従前の判例法理を明文化したものであり、大きな変更はありません。ですが、一部、従前の考え方と大きく変更があった部分もあるので、以下、変更点をさらっていきます。

  1. (1)目的物返還義務の明文化

賃貸借契約終了時に賃借人は引き渡しを受けた賃貸借目的物を賃貸人に引き渡さなければならない旨明示されました(改正法601条)。

  1. (2)賃借人の妨害排除請求権の明文化

対抗要件を具備した不動産賃貸借について、不動産賃借人の不動産賃貸借に基づく妨害排除請求権及び返還請求権を明文化しました(改正法605の4)

なお、基本的には、改正法施行日以前に締結された賃貸借契約には改正前の民法の適用がなされますが、これは例外となっており、改正法施行日以後に占有を第三者が妨害し、又は不動産を第三者が占有しているときには、民法605の4に基づく妨害排除請求等が可能となります。

  1. (3)賃貸借期間の伸長

借地借家法の適用のない賃貸借(駐車場、太陽光発電等の建物所有目的以外の賃貸借など)は締結可能な賃貸借期間を最長50年と規定されました(改正法604条)。

改正前民法では賃貸借の上限20年でしたので、これは大きく変更になります。
改正法施行日以後に賃貸借契約の更新にかかる合意があった場合には改正法604条の適用になります。

  1. (4)賃借人による修繕権の新設

改正法では賃借人による修繕が必要になった場合に一定の場合に、賃借人による修繕の権利を新たに認めました(改正法606Ⅰ)。

実務的には契約書の中で賃貸人あるいは賃借人が修繕を行う場合と範囲を定めることも多く、賃借人に有益費償還請求が認められるので賃借人が対応しない場合には賃借人が自ら修繕を行っている場合も有り得るので、実務的に大きな影響はないかもしれませんが、今後は賃借人の権限が明確になったことを踏まえて修繕を誰が行うのか、費用負担をどうするのかを明確に合意しておくことがより求められるでしょう。

  1. (5)敷金について定義等の明文化

改正前と比べて、敷金の性質についての変更はありません。

敷金について「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」と明文化し、また、敷金返還請求権の発生時期についての判例法理が明文化されました(改正法622の2)。

敷金の充当方法についても従前の判例法理を明文化した(改正法622の2)ものであり、実務への影響は少ないといえます。

  1. (6)賃借物の一部滅失等による賃料減額及び解除

賃借人の責めに帰することが出来ない事由によって、賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合に使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて当然賃料が減額されることが明文化され(改正法611Ⅰ)、さらに賃貸物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることが出来なくなった場合に残存する部分だけでは賃借した目的を達成することが出来ない場合には賃借権に解除権を認めました(改正法611Ⅱ)。

  1. (7)賃貸人の地位の移転

不動産の賃貸人の地位は不動産の譲受人に同然に移転することを明文化しました(民法605の2)。

そして、賃借物の目的物たる不動産が譲渡された場合でも、譲渡人と譲受人の間で不動産賃貸人の地位を譲渡人に留保するとの合意をして、かつその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をした場合には、賃貸人に移転しないとして賃貸人の地位の留保について賃借人の同意なく可能とされました(605の2)。このため、収益不動産の所有権者兼賃貸人が当該不動産を売却してリースバックする方法により流動化を図るスキームについて、改正法では賃借人の同意が不要になります。

賃貸借の目的たる不動産の譲渡に伴い賃貸人の地位が移転した場合、費用償還債務や敷金返還債務は譲受人に承継されることを明記しました(改正法605の2)。また賃貸不動産の譲渡があった場合に譲渡人と譲受人の合意により賃貸人の地位を譲受人に移転することができる旨が明らかになりました(改正法605の3)これも判例法理を明確化したものです。

  1. (8)転貸の効果

改正法において、転借人は賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の範囲を限度として賃貸人に対して直接履行する義務を負うことが明らかになりました(改正法613Ⅰ)。そのほか、適法に転貸借がされている場合に賃貸人と賃借人が賃貸借契約を合意解除しても転貸人に対抗できない旨明文化しました(613Ⅲ)。いずれも従前の判例法理を明らかにしたものです。

さて、賃貸借契約の改正についてですが、ほとんどが判例法理を明確にしたものであることがお分かりいただけたかと思います。

こういった改正のほとんどがそういわれてみると条文の解釈であり、法律上明文化されていなかったことに改めて気づかされます。

賃貸借契約の部分だけをとってみても、一般の方にわかりやすい条文になりましたね。

今回はここまでにし、次回は、関心の高かった保証についての改正についてからお話しさせていただきます。