弁護士法人宇都宮東法律事務所

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コラム

改正債権法~①交通事故実務に与える影響


2020年05月21日コラム

債権法改正により改正民法が令和2年(2020年)4月1日に施行されました。

これにより、交通事故実務に対して大きな影響を及ぼすとされています。

私達の事務所の注力分野である交通事故分野において、どのような改正がなされ実務への影響があるのか?について、今回はお話ししていきます。

まず、今回、交通事故実務に関する分野においてどの点の改正が影響を与えるのか、改正のポイントについて、説明をしていきます。

交通事故実務に大きな影響を与えるとされる、今回の改正のポイントは以下の3つでしょう。
  1. ①時効

特に
時効の起算点及び時効期間
時効の更新及び完成猶予
協議を行う旨の合意による時効の完成猶予
についての改正です。

次に
  1. ②法定利率・遅延損害金と中間利息控除
最後に
  1. ③不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止
が挙げられます。
まず、①時効に関しての改正について。

今回の改正では不法行為による損害賠償請求権の消滅時効について「時効の起算点及び時効期間」として、短期3年及び長期20年がいずれも時効期間であることの明記がなされました(改正法724条)。
そして、人の生命又は身体の侵害に関しては短期時効期間については5年とされました(改正法724条の2)。
これによると、
人損事故に関しては、被害者が事故及び加害者を知ってから5年が時効期間(短期)又は事故日から20年間が時効期間(長期)
ということになりました。
物損事故に関しては、被害者が事故及び加害者を知ってから3年が時効期間(短期) 又は 事故日から20年間が時効期間(長期)
ということになります。

このように不法行為に基づく損害賠償請求権の短期消滅時効について、通常の短期消滅時効の期間の変更はありませんでした。
ですが、要保護性の高い「生命又は身体の侵害による損害賠償請求権」(人損に関する不法行為請求権)のみ一般債権の消滅時効期間(改正民法166条1項1号)と同じ5年間となりました。
ちなみに、起算点は変更点がないものと考えられています。

長期消滅時効については、現行民法の除斥期間とされている「不法行為の時」から20年間は、除斥期間ではなく時効期間であることが明記されました。
したがって、除斥期間では一般に中断や停止がなく、裁判所が判断するのに当事者の援用も不要であるため、信義則違反ないし権利濫用による援用の制限も問題とならないとされていましたが、施行後からは後で述べる時効の完成猶予及び更新等が問題となりうるし、行使するには援用も必要となります。
さらに、信義則違反ないし権利濫用による援用の制限も問題となりえます。
この時効についての経過措置についてですが、現行民法724条の後段20年が改正民法施行の際すでに経過していた場合は、現行民法の規定によります(附則35条1項)。
改正民法の724条の2の規定は、改正民法施行の際すでに現行民法724条前段による3年間の消滅時効が完成していた場合は適用されないということになっています。
改正法の適用になるのかどうか重要な判断となりますので、各期間が改正民法施行の際に徒過しているかどうか?常に意識して確認していくことが必要です。

以上を踏まえて時効期間の改正が実務に与える影響点について考察してみました。

まず、不法行為請求権の物損に関するものと人損に関するものとで区別して管理をする必要性が生じるという点です。人身事故に関する不法行為債権であっても、物損については先に請求する、あるいは物損に関する不法行為債権の時効中断等したうえで人損と併せて請求することが必要になるのではないでしょうか。
次に安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求権(現行民法415条)との主観的起算点からの消滅時効の期間が同じになります(5年)ので、不法行為請求権の時効期間が過ぎているため、安全配慮義務違反で構成という手段は使えなくなることに注意が必要になるでしょう。
そして、上述しましたが経過措置に注意が必要となります(改正民法施行時点において現行民法による消滅時効期間又は除斥期間が過ぎていたか否かにより判断することになります)。
最後に、自賠法3条の運行供用者責任への影響が問題となりますが、同責任についての時効は民法に従う(自賠法4条)ため、今回の改正により主観的起算点から5年、客観的起算点から20年とされました(しかし、被害者の自賠責保険会社あるいは国に対する自賠法に基づく請求権(法16条1項、72条1項)は同法の規定により3年間が消滅時効とされている(法19条、75条)ので注意が必要です)。

さて、消滅時効の期間の改正だけでも実務上、気を付けて判断しなければならないことがありますね・・・。一般の方には判断が難しいことも多いと思いますので、是非私達専門家にご相談ください。

時効についての改正点はまだまだ続きます。次回は時効の更新及び完成猶予についてお話していきます。