弁護士法人宇都宮東法律事務所

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コラム

保険法〜告知義務違反①~


2020年11月09日コラム

日常的に私たちはさまざまな保険に加入しています。医療保険、車両保険、火災保険、生命保険等々・・・
保険金の請求をした場合、保険会社から保険金の支払いがなされることが一般的です。しかしながら、まれに保険金の支払いを拒否されてしまうケースがあります。これがどのようなケースなのか、今回はお話していきます。

1 保険法について
まず保険金請求に際して適用される法令は何か?についてです。
保険法という法律が制定され、平成22年4月1日以降に締結された保険契約に適用(保険法附則2条)されることになりました。
それよりより前は平成20年改正前商法に保険についての規定がありますので、適用がどちらになるか、確認が必要です。

以下、保険法の適用を前提にお話ししていきます。

2 告知義務違反による保険契約の解除について
保険契約者又は被保険者に告知義務違反が認められる場合、保険者は保険契約を解除することができる(保険法55条1項)とされています。
当該解除の効力は将来に向かって生じるが(同法59条1項)、保険者は解除がされた時までに発生した保険事故について保険給付を行う責任を負わない(同条2項1号)とされています。
これが、保険金請求をして支払いを拒否された場合の法的な根拠になります。

それでは告知義務違反により解除権の発生する場合、とはどのような場合をいうのでしょうか?
これには、客観的要件と主観的要件が挙げられます。

(1)客観的要件
「告知事項の不告知又は不実告知がされたこと」
保険法37条において告知すべき事項とは、「保険事故の発生の可能性に関する重要な事項のうち、保険者になる者が告知を求めたもの」をいいます。
具体的には、
・被保険者の生命に関する危険を測定するために必要な事実であり、ある事実が重要な事項に該当するかどうかの判断においては、保険者が当該事項に関する事実を知っていたならば当該契約を締結しなかったか
又は
・締結したとしてもより高額な保険料とする等の特別条件を付さないと締結しなかったかどうか
が基準になります。

生命保険でいえば、既往症、現症、その他身体の状態で生命の危険測定に影響の及ぶものが重要事実となります。既往症・現症はそれ自体生命に危険を及ぼすほど重いものに限定されないが、軽微なものまで全て重要事実にあたりません。

重要性が肯定された事例の多くも告知義務者は病名を知らなかったと主張するのが一般です。
そのような場合でも、
・実はこれらの病気にかかっていたことにより何等かの異常が生じておりそれについては自覚症状があること
・それにより医師から検査や入院の必要性を説明されていたこと等の事実が重要事実とされるのが通例です。
なお、この場合も生命の危険測定に影響するもののみが重要事実とされます。

保険法下における告知義務は質問応答義務であるから、保険者が告知を求めた事項でなければ重要な事実であっても告知義務の対象になりません。このため、告知義務違反の有無の検討をするには関連質問の特定が重要といわれています。

(2)主観的要件
「保険契約者又は被保険者の故意または重過失」があること」
「故意」とは、ある事実の存在並びにその重要性を知り、それゆえに告知すべきことを知りながら黙認又は虚偽の陳述をすることであり、詐欺の意思や害医までは要求されません。
「重過失」とは事実の重要性や告知すべきことを知らないことにつき、重大な過失があることをいいます。

なお、(1)と(2)の要件は保険者において主張立証することが必要(同法55条1項)とされています。
告知義務違反が立証されれば、解除が認められることになり、保険金の請求をしても支払いを受けることができないことになります。

このように仮に保険金支払いを拒否された場合に、保険法上の告知義務違反があったかどうかの判断は関連質問の特定や、具体的事案に基づく主観的事情の判断が必要となり、素人の判断では難しいことが多いと思います。
抱え込むことなく、ぜひ法律の専門家である弁護士に相談することをお勧めします。
当事務所では、類似裁判例の検討等を行い、保険金の支払いが受けられるよう、法的にサポートしていきます。