弁護士法人宇都宮東法律事務所

028-612-6070

028-612-6070

相談予約はこちら

コラム

保険法~告知義務違反②~


2020年11月24日コラム

前回に引き続き、今回も保険法の告知義務違反についてです。
仮に告知義務違反があるとして保険金の請求を拒絶された場合でも、保険契約者側で抗弁事由の立証ができれば請求が可能になります。
どのようなことを主張立証すればいいか?について今回はお話していきます。

1 保険契約者側の抗弁について
保険法55条2項では
① 保険契約締結時に保険者が告知義務違反の事実を知り、又は過失によって知らなかったこと(保険者の過失)
② 保険媒介者が保険契約者又は被保険者の告知を妨げたこと(告知妨害)
③ 保険媒介者が保険契約者又は被保険者に対し告知をせず又は不実の告知をすることを勧めたこと(不告知教唆)を保険契約者側が立証した場合には保険者による解除権行使認められないとしています。

これは、仮に保険会社が解除権を行使したとしても、保険者側に過失があれば保険金請求は認められる可能性があるということを意味します。
この過失の判断にあたり、診査医や生命保険募集人が告知受領権を有するか?が争点になることがあります。

この点について、生命保険では診査医は告知受領権を付与されているので、診査医の悪意は保険者の悪意と同視され、過失も同視されます。
過失の内容は通常行われている医的検査に即して判断されるのであって、普通開業医が通常発見することができた病歴を不注意で見過ごしたかどうかが基準となるとするのが古くからの判例の考え方です。
一方、生命保険募集人は判例多数説では告知受領権はないとされています。
しかしながら、生命保険募集人が告知義務者に告知しないように勧めるような行為をした場合には、この結論を維持するのは問題として、保険者側に募集人の選任監督の過失を認めて過失を認める裁判例もあります。
この抗弁事由の主張立証のハードルは一般的には高いといえそうです。

2 除斥期間について
告知義務違反に基づく解除は無期限にできるわけではありません。
告知義務違反に基づく解除権は保険者が告知義務違反による「解除の原因があることを知った時」から1か月間行使しないとき、又は生命保険契約の締結から5年を経過したときは消滅する(保険上55条4項)とされています。
この「解除の原因を知った時」とは前記主観的要件及び客観的要件のいずれも知った時を指し、解除の原因事実を知ったかは、保険者内での解除権限を有する者が知ったかにより判断されます。

以上、保険法の定める告知義務違反について話をしてきました。
保険金の支払いを拒否された場合でも、何等かの対抗手段がある可能性もあります。この点は非常に専門的な判断が必要になります。
保険金不払いでお困りの場合には、諦める前に一度、当事務所にぜひご相談ください。