債権法改正~賃貸借契約について②
2020年05月18日コラム
前回に引き続き、賃貸借契約について、今回は保証からお話しします。
(9)保証
どう変わったのか、以下お話していきます。
- ①極度額の設定
改正法施行日前に締結された賃貸借契約については原則として改正法施行日以後も引き続き改正前民法が適用され保証について極度額の定めがなくても無効になりません。
しかしながら、改正後に新しく締結される賃貸借契約の場合には極度額の定めは無ければ無効になるため、注意が必要です。
それでは、極度額をいくらに設定すべきか?
これが不動産オーナー様にとって大きな関心事になると思います。
これについては、具体的な取引内容、予想される債務の額等の多寡を踏まえて個別具体的に判断されます(あまり高額に設定しますと法90条や消費者契約法の適用がある場合には消費者契約法10条により無効になることもあるので注意が必要です)
具体的な金額の目安として、各専門家により様々な意見があるそうで、1年分の家賃が目安になる(家賃滞納3か月分+原状回復費用を想定 国土交通省の極度額に関する資料として中央値は12か月分になっているそうです)との意見や、2年分の家賃相当とする考え方(居室を壊されるというリスクも考えると、2年分でも合理性が認めるのではという考え方のようです)もあるそうです。
強制執行事件の経験からすると、やはり、それぞれの物件の態様により明け渡しの執行費用は様々ですので、1年分の家賃を目安としつつ、具体的事案により修正をしていくしかないのではと考えます。
なお、更新の場合に改正法の適用があるか?という疑問点もあると思います。
こちらについては「更新」が「新たな契約が締結された」といえるかどうかで改正法の適用の有無が判断されます。
法定更新、明確な合意行為にある合意更新の場合など、更新についても様々な態様がありますので、新たな合意といえるかどうかは個別事情により判断するしかないといえるでしょう。
- ②保証人に対する情報提供義務
- 保証人が主たる債務者から委託を受けて事業の為に負担する債務を主たる債務する保証又は主たる債務の範囲に事業のっために負担する債務が含まれる根保証をするときは、保証契約を締結する際、主たる債務者から保証人に対して、主たる債務者の財産及び収支の状況、主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況、主たる債務の担保として他に提供し又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容に関する情報を提供しなければなりません(改正法465の10)
- 保証人が主たる債務の委託を受けて保証をした場合、保証人の請求があった時には債権者は保証人に対して遅滞なく主たる債務の元本、利息、損害賠償、その他主たる債務に関するすべての債務についての不履行の有無、残額、履行期限の徒過の有無を通知する必要があります(改正法458の2)
- 主債務者が期限の利益を喪失したとき、債権者は期限の利益の喪失を知った時から2か月以内に保証人に通知する必要があります(改正法458の3)
(10)原状回復義務
これは従前の判例法理が明文化されたものです。
実務上、事業者間で締結される店舗などの賃貸借契約の場合には、通常損耗含めて賃借人の原状回復義務の対象とするものが少なくありません。この場合には、改正法の内容と異なるので特約として明確に合意をしておく必要があります。
この原状回復義務についても明文化されたため、お問合せが多かった点ですが、基本的には従前の判例法理を明文化したものであり、実務上の影響は少ないと思われます。
以上、債権法改正の賃貸借契約の部分についてお話ししてきました。
債権法改正と聞くと、賃貸借契約はどうなるの?と不安な不動産オーナー様も多かったように思います(債権法改正があった時期に重なりコロナウィルスの影響もありましたね)。
まだまだ分かりづらいことも多いと思いますのでご不明な点はお気軽にお問合せください。